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2022 国家総合職 経済区分 No.8

 ある企業(プリンシパル)が一人の労働者(エージェント)を雇用しており,その労働者に資格の取得による人的資本の蓄積を促そうとしている状況を考える。
資格には,上級の資格と中級の資格の二種類があり,労働者が上級の資格を取った場合の人的資本の水準を\(h_{H}\),中級の資格を取った場合の人的資本の水準を\(h_{M}\) とする。
労働者には二つのタイプがある。タイプAの労働者が上級の資格を取得するには80 の費用がかかり,中級の資格を取得するには40 の費用がかかる。タイプBの労働者が上級の資格を取得するには110 の費用がかかり,中級の資格を取得するには55 の費用がかかる。ただし,資格取得にかかる費用は労働者が負担する。
また,労働者がどちらのタイプであるか労働者自身は知っているが,企業は労働者のタイプを観察できないという情報の非対称性が存在しており,企業は労働者のタイプは50 % の確率でAであり,50 % の確率でBであると考えているものとする。
企業は人的資本の水準h は観察することができ,人的資本の水準\(h\) と賃金\(w\) のペア\((h,w)\)を「契約」として労働者に提示する。
労働者の効用は賃金から資格取得のための費用を引いたものであり,以下のように示される。
タイプAの場合:\(U_{A}(h_{H},w)=w-80\),\(U_{A}(h_{M},w)=w-40\)
タイプBの場合:\(U_{B}(h_{H},w)=w-110\),\(U_{B}(h_{M},w)=w-55\)
どちらのタイプの労働者についても留保効用は0 であり,企業から提示された契約から得られる効用が0 を下回る場合は,労働者はこの企業を辞め,他の企業で働くものとする。
企業の利潤は労働者の人的資本の水準で決まる収入から賃金を引いたものであり,以下のように示される。
\(r(h_{H},w)=1000-w\), \(r(h_{M},w)=945 -w\)
ただし,労働者が辞めてしまった場合の企業の利潤は0 とする。
以上の設定の下で,企業が労働者に対し,人的資本の水準と賃金についての複数の契約を提示し,それに対して労働者側は契約内容についての交渉の余地はなく,提示された契約のいずれかを受け入れるか,いずれも拒否するかを選択するしかないという状況を考える。
いま,以下の2パターンの契約の提示の仕方を考える。それぞれのパターンにおける企業の利潤の期待値の組合せとして妥当なのはどれか。
パターンⅠ:\((h_{1},w_{1})=(h_{H},290)\)と\((h_{2},w_{2})=(h_{M},260)\)を提示して,労働者に選ばせる。
パターンⅡ:\((h_{1},w_{1})=(h_{H},305)\)と\((h_{2},w_{2})=(h_{M},260)\)を提示して,労働者に選ばせる。

  パターンⅠ   パターンⅡ
1.  685       690
2.  685       695
3.  697.5      690
4.  697.5      695
5.  710       695

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正答 1

パターンⅠのとき、
タイプAの労働者は提示された賃金水準の場合、中級の資格を取得した方が効用が高くなるので、中級の資格を取得する。
タイプBの労働者も中級の資格の方が効用が高いので、中級の資格を取得する。

この時の企業の期待利潤は
\(r(h_{M},w)=945 -260=685\)

パターンⅡのとき、
タイプAの労働者は、上級の資格を取得したほうが効用が高いので上級の資格を取得する。
タイプBの労働者は、中級の資格を取得したほうが効用が大会ので中級の資格を取得する。
この時のこの企業の期待利潤は
\(0.5(1000-305)+0.5(945-260)=690\)
となる。


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公務員試験過去問研究
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