不法行為に関する次の記述のうち、判例に照らし、最も妥当なのはどれか。
- 化学工業に従事する会社が、その目的である事業によって他人に損害を与えた場合には、当該損害の発生防止のため事業の性質に従って相当な設備を施していたとしても、当該損害が生じた以上は過失が認められ、損害賠償義務を免れない。
- 訴訟上の因果関係を立証するためには、特定の事実が特定の結果発生を招いた関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することでは足りず、一点の疑義も許されない自然科学的証明を要する。
- 不法行為による損害賠償については、民法第416 条に規定する債務不履行の場合と異なり、その生じた損害につき予見可能性は考慮されず、同条の類推適用はない。
- 不法行為による生命侵害があった場合、被害者の父母、配偶者及び子に限り、その財産権が侵害されなかったときでも、加害者に対し、直接に固有の慰謝料を請求することができる。
- 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点について、民法第724 条第1 号にいう「加害者を知った時」とは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味する。
(参考) 民法
(損害賠償の範囲)
第416 条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさ
せることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、
債権者は、その賠償を請求することができる。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724 条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
〔第二号略〕

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正答 5
1 誤り。事業の遂行によって発生しうる損害を予防するために事業の性質に従って相当な設備を施した以上、過失があるとは言えないから、たとえ他人に損害を与えたとしても損害賠償責任を負わない。
2 誤り。高度の蓋然性が証明されればよい。自然科学的証明までは不要。
3 誤り。不法行為の損害賠償にも民法416条が類推適用され、通常生ずべき損害、特別の事情によって生じた損害の場合でも、予見すべきであった場合は、債権者は賠償を請求できる。
4 誤り。被害者の父母、配偶者及び子に限定されるわけではない。例えば被害者の夫の妹であっても被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたような場合は、慰謝料を請求しうる。
5 正しい。