政府と中央銀行を一つの政府セクターとしたときの、政府セクターの予算制約式を考える。中央銀行の収入である通貨発行益(シニョレッジ)は、租税と共に政府セクターの収入となる。
ここで、政府セクターの予算制約式は以下のように示されるとする。
\(B_{t+1}+T_{t}+\frac{H_{t+1}-H_{t}}{P_{t}}=G_{t}+(1+i)B_{t}\)
ただし、\(B_t\) は\(t\) 期の国債発行残高、\(T_t\) は\(t\) 期の税収、\(H_t\) は\(t\) 期のハイパワードマネー(マネタリーベース)、\(P_t\) はt 期の物価水準、\(G_t\) は\(t\) 期の政府支出、\(i\) は国債の利子率である。また、この式において、通貨発行益の実質値は、ハイパワードマネーの増加分を物価水準で割った値に等しいと考える。
ここで、\(G_{0} =T_{0} = 100\)、\(B_{0} =H_{0}=1000\)、\(i=0.1\) とする。貨幣数量説のケンブリッジ方程式が毎期成立しており、マーシャルの\(k\) は1 、実質国民所得は600 で一定であるとする。さらに、貨幣供給量のハイパワードマネーに対する比率を表す貨幣乗数は毎期1.2 であるとする。
このとき、\(B_{1}=1000\)(すなわち、1 期の国債発行残高が0 期から変化しなかった)とすると、
1 期におけるハイパワードマネー\(H_{1}\) の値として最も妥当なのはどれか。
1. 1000
2. 1050
3. 1100
4. 1150
5. 1200
正答 5
\(t=0\)として、式に問題の値を全て代入すると
\(1000+100+\frac{H_{1}-1000}{P_{0}}=100+1.1×1000\)
整理して
\(H_{1}=100P_{0}+1000\) (1)
ケンブリッジ方程式より
\(M=kPY\)
題意より
\(M_{t}=600P_{t}\) (2)
貨幣乗数より
\(M_{t}=1.2H_{t}\) (3)
(2)(3)より
\(1.2H_{t}=600P_{t}\)
\(P_{t}=\frac{1.2H_{t}}{600}=\frac{H_{t}}{500}\)
\(H_{0}=1000\)より
\(P_{0}=2\) (4)
(4)を(1)に代入して
\(H_{1}=100×2+1000=1200\)